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会長ごあいさつ

会員向け情報提供事業

  2023年4月1日  

  会長  

 2023年度を迎えるにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

 弊センターにおける2022年度の事業を振り返えりますと、2021年度に引き続きCOVID-19感染の影響から脱し切れない中、全般的なスケジュールの遅延、セミナーや会議等のオンライン開催が余儀なくされる一年でした。一方で、ネットカーボンゼロという時代の要請が石油開発分野にも強く押し寄せてきており、賛助会員各位からも、その重い課題への関心が多数寄せられました。そうした状況を踏まえ、世界のネットカーボンゼロに係る技術、事業、政策動向等について幅広い情報を得るため、S&P Global(旧 IHS-Markit)社との共同セミナー及びSchlumberger社より講師を招聘したワークショップを開催しました。それぞれに参考となる情報提供を受けることが出来ましたが、特に後者では米国のIllinois Basin Decatur ProjectIBDP)においてCCSの貯留層モデリング、地震探査、MVAMonitoringVerificationAccounting - 圧入CO2のモニタリング、分布状態の検証、貯留量評価から成るCO2漏洩リスクの管理手法)等を担当した実務者から具体的な内容が紹介され、当事者目線でCCSを学ぶ機会となりました。参加者の意識も頗る高く、関心の軸足が既に各論に置かれている現実も認識した次第でした。

 ネットカーボンゼロが石油開発部門の事業展開にも大きな翳をおとす時代相になってきていますが、それを愈々加速させる流れが、今米国で起きつつあります。米国では1997年よりCCSへの国家的取組みが始まっており、既に20年を超える研究開発やフィールド実証試験等を通じた成果が蓄積されています。唯、技術的な成熟度とは別に、カーボンプライス制度もない中、ビジネスとしての投資リスクは未だ大きく、CCSの社会実装が杳として進まない状況にありました。しかしながら、2022816日にバイデン大統領が署名し成立したインフレ削減法が、そうした状況を一変させる可能性をもたらしつつあります。2008年に導入された内国歳入法45Q条項によるCCS事業促進のためのインセンティブであった税額控除が、大幅に引き上げられました。2023年以降に着手されるCCS事業について、恒久的に地中貯留されるCO2には85ドル/トン、EORに供される場合は60ドル/トンが税額控除の基準となり、CCS事業の投資リスクが大きく軽減される制度が整えられました。目下、米国ではCCSへの新しいインセンティブの話題がかまびすしく語られています。

 米国内におけるCCS事業の拡大は、何れ米国技術標準とともに世界に伝播されていくことになり、石油開発にあっても、CCS等のネットカーボンゼロとが組み合わされた探鉱・開発事業モデルがデファクトとなっていくものと想像されます。石油開発を取巻く景色は大きく変容することになるものと思料されます。

 そうした歴史の曲がり角に差し掛かりつつある中、奇しくも弊センターは昨年の1116日に設立30周年を迎えました。いみじくも、この30年という節目は、弊センターの在り方にも触れる根源的な課題を突きつけています。2023年度における弊センターの活動はセミナー開催が主体となり、そのテーマは、前述のとおり、賛助会員各位のご関心の高いCCS関連が主体となる予定ですが、皆様方の変わらぬご支援に加え、弊センターの今日的意義につき、忌憚のないご指摘等をお願い申し上げ、新年度にあたってのご挨拶と致します。